私が読んだ解析学の本

陶磁器 解析学(微積分、複素関数、測度論、関数解析)

 最寄り駅からバスに揺られて、約25分。新築の家が建ち並ぶニュータウンを抜けると小高い丘陵が見えてくる。その丘陵の坂道を登った場所に私たちの学校がありました。身動きが出来ないくらい満員のスクールバスの中でも、新緑に包まれた車窓の風景が新鮮でした。数学を学んだ学生時代を振り返りながら、微分積分から関数解析まで私が読んだ解析学の本を紹介させていただきます。

 「小高い」と言えば、解析学を学ぶとき最初に克服しなければならない小高い山が、ε – δ 論法でした。限りなく近いということ(極限)を数学の言葉で正確に記述するための論法が、この ε – δ 論法です。 ε – δ 論法を使えば、微分積分はもとより関数解析などの分野に至るまで、矛盾なく記述(証明)をすることができるようになります。高校数学の微分積分で曖昧さを感じていた原因が、この ε – δ 論法を知ることにより解決しました。



高木貞治著 解析概論 (岩波書店)

  ε – δ 論法に頭を悩ませている頃、友達に誘われて「高木貞治著 解析概論 岩波書店」を読む輪講に参加しました。メンバーは10人くらいだったと思います。1節ごとに担当を決め、先生のアドバイスを受けながら発表していきました。私が担当した節は「接線および曲率」の節でした。行列と行列式を用いて説明したことを薄っすらと覚えています。

 微分積分を始める前に、実数の性質(連続性)について正確に記述する必要があります。その時に「デデキントの切断」という考え方が重要になります。この解析概論は「デデキントの切断」の解説が載っている数少ない本の一冊であると思います。また、Fourier式展開やLebesgue積分の話まで載っているので、学部の3年まで使用していました。

 2学年になると、解析学は複素関数論が中心になりました。Cauchy-Riemannの関係式から始まり、Cauchyの積分定理、Cauchyの積分表示、留数定理まで一通り勉強しました。
 タイトルを正確に思い出せないのですが、「能代清著 初等函数論 (培風館)」という本が読み易かったと思います。
 もう一つ「辻正次著 函数論 上・下 (朝倉書店)」が名著として知られていました。この本は、スティルチェス積分(リーマン積分の一般化)により複素積分を定義してあったと、記憶しています。

笠原乾吉著 複素解析(筑摩書房)

 最近、見つけた複素解析の本「笠原乾吉著 複素解析(筑摩書房)」を紹介します。この本では、Cauchyの積分定理をグリーン・ストークスの定理を用いて証明してありました。

 また付録には、偏微分法から/複素平面/曲線、線積分、グリーン・ストークスの定理/平面のベクトル解析/1の分解とグリーン・ストークスの定理の証明/級数の和、一様収束、整級数、無限積/正則関数とベクトル解析/解析接続、1価性定理、コーシーの積分定理と豊富な内容になっています。

 学校の周りには、喫茶店もなければ本屋さんすら、ありませんでした。それゆえ授業が休講になると、図書館で本を読むか、自販機が二つ置いてあった売店で珈琲を飲みながら時間を潰していました。たまに、教授の研究室に遊びに行くと教授が数学の話をしてくれました。

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 教養課程が終わると、中学や高校の数学の先生を目指すために教職課程を取る人、大型コンピューターやミニ・コンピューター(当時はパソコンなどは無かった時代です)を使用して本格的なコンピューター・サイエンスを研究する人、純数学である代数学の勉強をする人、それぞれの専門分野に分かれました。それと、微分方程式を応用して制御システム工学の研究をした人もいました。

伊藤清三著 ルベーグ積分入門 (裳華房)

 私は関数解析の勉強がしたかったので、ルベーグ(Lebesgue)積分の輪講に参加しました。このとき、読んだ本が「伊藤清三著 ルベーグ積分入門 (裳華房)」でした。

 Lebesgueの収束定理とFubiniの定理を中心に勉強しました。特に、Lebesgueの収束定理は関数空間が完備であることを証明するときの核となる定理なので、丁寧に証明したことを覚えています。

 3年生の後半になると、関数解析の本を何冊か読み、スペクトル分解と作用素の半群に興味を持ちました。
20世紀の初頭に誕生した関数解析学は、微分方程式や積分方程式などの問題を解く方法として発展した分野であり、その応用範囲は、偏微分方程式のほか、数値解析や量子力学などの幅広い方面に広がっています。

宮寺功著 関数解析(筑摩書房)

卒業研究は「作用素の半群」をテーマとし、参考書として「宮寺功著 関数解析(筑摩書房)」を選びました。

 この本では、関数解析の基本三大定理と言われているハーン・バナッハの拡張定理・一様有界性定理・開写像定理を証明した後、ボッホナー積分や線形作用素の半群の話に至るまで記述してあります。
論理展開が読み易く、証明の式変形が丁寧なこの本は、関数解析の基礎を過不足なくおさえた名教科書として有名であります。

 最後に、数学者でもなく、数学を教えたこともない私が、この様なブログを書くことは僭越だとは思いますが、学生時代の思い出ブログとして読んで頂けたならば幸いです。尚、このブログは未完成です。必要に応じて加筆していきますので、よろしくお願いいたします。

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